新型コロナウイルスによる肺炎の感染が深刻な中国で事業を手掛ける総合商社各社は、物流の停滞や消費の落ち込みが景気を減速させ、業績を悪化させることを懸念する。さらに中国発の景気減速が、原油や鉄鉱石など商社が得意とする資源の国際市況を押し下げることにも強い警戒感を示している。
伊藤忠商事が5日発表した令和元年4~12月期連結決算では、最終利益が前年同期比7・3%増の4266億円と好調。4分の3の期間が経過し、今期5千億円の最終利益見通しに対し、進捗(しんちょく)率は85%。そのため、業績予想を上方修正する可能性が高いとされたが、鉢村剛専務執行役員は「この1~3月期の先行きが不透明で、修正は見送った」と、新型肺炎がその大きな理由と説明した。
各社とも「今期は新型肺炎を理由に業績を下方修正することは避けられそうだ」(丸紅の矢部延弘専務執行役員)などと残り2カ月弱となっている今期への影響は限定的と強調。一方で、来期はその影響が色濃く出そうだ。
韓国・現代自動車は、中国の部品工場からの供給が滞るため、完成車の生産を順次停止する。現代の代理店としてタイなどに商用車を輸出する双日では、田中精一副社長が「4月以降に、生産停止の影響が出る」と予測。三菱商事の増(ます)一行(かずゆき)常務執行役員は、各種の資源価格が景気減速観測で下落するとして、「来期の業績への影響が出そうだ」と警戒感を示した。