「人の心を持っていない」 相模原殺傷遺族ら涙の質問もすれ違い





横浜地裁で開かれた被告人質問で、植松聖被告(手前左)に質問する尾野剛志さん(イラストと構成・勝山展年)

 「どうして」「なぜ」-。相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で平成28年7月、入所者ら45人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元職員、植松聖(さとし)被告(30)の差別的な思考の背景に迫ろうと、犠牲となった入所者の遺族らはときに涙を浮かべながら、事件を起こした理由を繰り返し問いかけた。それでも植松被告は「社会のため」などと一方的な答えを淡々と続け、問答はすれ違いを続けた。

 横浜地裁で行われている審理では被害者や家族に配慮し、一部を除き死者を「甲」、負傷した入所者を「乙」と分けてアルファベットを割り振り、「甲B」「乙C」などと匿名で呼んでいる。

 被害者参加制度を利用して最初に質問に立った「甲E」さん(女性)=当時(60)=の弟の男性は、遮蔽板を使わず植松被告と向き合い、事件以来「(自分は)狂乱状態」と打ち明けた。声は柔和で丁寧な口調だが、感情を必死に抑えているようにも聞こえた。

 植松被告は「亡くなられた方々には誠に申し訳なく思います」と述べた。男性は「(事件後に)私は放心状態になり、涙が止まりませんでした」とハンカチで目頭を押さえた。

 「意思疎通ができない人は社会の迷惑になっている」。事件を起こした理由をこう語る植松被告に対し、男性は「なぜ殺さないといけなかったのか」と畳み掛けたが、「殺した方が社会の役に立つと思った」と従来の身勝手な主張を繰り返した。

 「大切な人は」との問いには「大切な人はいい人です」とかみ合わない返事をする場面も。応酬は平行線をたどり、男性への謝罪の言葉は最後までなかった。

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