京都市で6日に開幕した関西財界セミナー。出席した企業トップからは、関西と経済的な結びつきが深い中国における新型コロナウイルスの感染拡大が関西経済に与える影響について懸念の声が相次いだ。
中国からの訪日客に多大な恩恵を受けてきたホテル業界の首脳らは、「感染拡大の影響はかなり大きい。お客さまに安全に過ごしてもらうよう努力する以外、打てる対策は少ない」(ロイヤルホテルの蔭山秀一社長)、「訪日客の落ち込みだけでなく、日本人が外出を控える傾向も強まっており、宿泊申し込みに勢いがない」(ジェイアール西日本ホテル開発の中村仁会長)など、苦しい状況を明かした。
中国人客の減少は鉄道各社にも影響を与えている。JR西日本の来島達夫副会長は「鉄道利用客の減少は確かにあった。影響がいつまで続くか見通しが立たないことへの懸念が大きい」と指摘。大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)の河井英明社長は「昨年、韓国人が減少した分を中国人がカバーしていた。春節で利用増を見込んでいた時期だけに、インパクトが大きい」と不安を隠さない。
新型ウイルスの広がりは、中国国内に製造拠点を持つ関西の製造業にも深刻な影響を与えている。
アシックスの広田康人社長は「中国の一部生産拠点や店舗で、営業できないなどの影響が出ている。現地工場の閉鎖などは(地元)政府の意向次第なので、事態の早期収束を祈るしかない」と語る。クボタの木股昌俊会長は「中国の一部の生産拠点は10日まで休業にした。操業を再開しても従業員がどれほど出勤できるか、本来の稼働が可能か、不安がある」と打ち明けた。
金融機関からも、顧客企業への影響を心配する声が相次いだ。
京都銀行の土井伸宏頭取は「問題の長期化により、サプライチェーンへの影響を懸念する声が上がっている」と明かす。りそなホールディングスの東和浩社長も「春節後も操業を再開できていない工場は少なくない。今後、影響は広範囲に及ぶのではないか」と予想した。
会場では、参加企業であるレンゴーが自社の備蓄用マスクを1400枚、サラヤがアルコール消毒薬を提供するなど、新型肺炎への警戒感が広がるなかでの開幕となった。
国際情勢を討議した第1分科会では、当初の予定にない新型肺炎の影響を問題提起に追加。現代中国研究家の津上俊哉氏は「最悪の場合、東京五輪の開催が延期される事態にもなりかねない」と警鐘を鳴らした。