機能訓練やレクリエーションが主流とされる日本のデイサービスにおいて、既存の枠にとらわれないユニークなアプローチで高齢者の心と身体に活力を与えている施設がある。全国に20拠点を展開する「ラスベガス」だ。パチンコ、麻雀、カードゲームといった“遊び”を通じて、要介護者が驚くほど元気になるというこのカジノ型デイサービスの舞台裏に迫る。高齢者の生きがいと健康を両立させる新たな可能性は、デイサービス業界にどのような変化をもたらすのだろうか。
非日常が織りなす「カジノ空間」での機能訓練
東京・町田に位置するデイサービス「ラスベガス」の玄関扉を開けると、そこはまるで別世界だ。きらびやかなパチンコ台が並び、フロア中央には豪華な照明に照らされた全自動麻雀卓が鎮座する。さらに奥のスペースには、ブラックジャックやポーカーといったカードゲームが楽しめる本格的なテーブルまで設えられている。従来のデイサービスのイメージを覆す、ラスベガスのカジノを彷彿とさせる“非日常空間”が、利用者を出迎えるのだ。
午後1時、フロアには軽快なレディー・ガガの楽曲「Born This Way」が流れ出す。この音楽を合図に、「さあ、皆さん!ベガストレッチの時間ですよ!」というスタッフの明るい声が響き渡る。昼食後のリラックスムードから一転、高齢者たちは専任のアスレチックトレーナーの指導のもと、アップテンポな曲に合わせて腕を伸ばしたり、太ももを高く上げたりと、予想以上の運動量でストレッチに取り組む。この独自に考案された「ベガストレッチ」は、午前10時と午後1日の1日2回実施され、参加することで施設内通貨「2万ベガス」を獲得できる。
デイサービス「ラスベガス」のカードゲームコーナーでブラックジャックを楽しむ高齢者
「ベガストレッチ」と施設内通貨がもたらす活気
「ベガストレッチ」で得た施設内通貨「ベガス」は、パチンコ、麻雀、ブラックジャック、ポーカーといった様々なレクリエーションの「ゲーム料」として使用される。このユニークなシステムは、単なる機能訓練に「目標達成」というゲーム性を加え、高齢者にとっての運動へのモチベーションを飛躍的に高めている。運動することでお金(ベガス)を得て、そのお金で好きなゲームを楽しむという循環が、利用者の自発的な活動を促し、身体的、精神的な活性化につながっているのだ。
一般的なデイサービスでは、体操や塗り絵、折り紙などの静的なレクリエーションが中心となることが多い。しかし「ラスベガス」では、カジノを模した刺激的な環境と、勝ち負けのあるゲーム、そして独自の通貨システムを組み合わせることで、高齢者が「通うのが楽しみ」と感じるような、全く新しいデイサービスの形を提示している。これにより、要介護度が改善したり、表情が明るくなるなど、目に見える変化が多くの利用者に見られるという。
まとめ
デイサービス「ラスベガス」は、従来の「介護」のイメージを刷新し、「遊び」を通じて高齢者の機能回復と生活の質の向上を目指す革新的な施設である。非日常的なカジノ空間、専門家が考案した運動プログラム、そして施設内通貨というユニークな仕組みが、高齢者の意欲を引き出し、彼らが「みるみる元気になる」という驚くべき成果を生み出している。これは、団塊世代を迎え、高齢化が進む日本社会において、介護予防や健康維持の新たな選択肢として、その可能性と価値を大いに示唆していると言えるだろう。
参考文献
- Yahoo!ニュース: ゲームで“遊んでいる”だけなのに、なぜか要介護者がみるみる元気になるデイサービス「ラスベガス」の舞台裏 (掲載元: 東洋経済オンライン)