米投資ファンドのエリオット・マネジメントによるソフトバンクグループ(SBG)の株式取得を受け、7日のSBGの株価が一時8%超上昇するなど、市場は好感を示した。SBGではこの1年で投資失敗が相次ぎ、孫氏の目利きに頼る戦略が岐路に差し掛かる。「物言う株主」が目付け役としてSBGに企業価値の向上につながる変革を促せるかが注目される。
エリオットとSBGで見解が一致するのは株価の割安感だ。SBGは出資を受け、「当社の株価が過小評価されていることについて株主とは考えが一致している」とのコメントを出した。
SBGは携帯電話子会社のソフトバンクや中国の電子商取引最大手のアリババグループなど投資先の保有株式の時価から純有利子負債を引いた額を株主価値と定義し、直近では約25兆円と算出する。一方で、SBGの時価総額は約10兆円と半分以下にとどまる。
エリオットもSBGの純資産価値が2300億ドル(約25兆円)程度になり得ると考えているという。昨秋にシェアオフィスを展開する米ウィーカンパニーで資金繰りが悪化するなど投資先の不調が露呈し、株価が大幅な割安水準であることが投資機会に映ったようだ。
「世界有数のアクティビスト(物言う株主)がメッセージを出すことでSBGの評価が変わる可能性がある」と東海東京調査センターの石野雅彦シニアアナリストは指摘する。孫氏は会見の場などで毎回「株価が安すぎる」と訴えてきただけに、株価浮揚のためにエリオットを呼び込んだとの見方もある。
今後はエリオットがどのような要求をしてくるかが焦点になる。一部報道では取締役の独立性や多様性の向上、運用額10兆円規模のソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の投資プロセスを検証する委員会を設置させたいという。SBGは「株主からのフィードバック(提案)を歓迎する」とした。
SBGは、SVFの巨額の資金力を武器に将来有望なAI(人工知能)関連の未上場企業に出資して自立的に経営させ成長を促す「AI群戦略」を推進し、順調に利益を上げてきた。だが、相次ぐ投資失敗によって孫氏の目利きで巨額を動かす投資スタイルへの視線も厳しくなりつつある。「名うての物言う株主であるエリオットとどのような対話を展開していくのかが今後のポイントだ」と松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは語る。(万福博之)