【ジュネーブ=板東和正】8日投票のアイルランド下院(定数160)総選挙の結果を受けて、アイルランド情勢が混とんとしてきた。中道右派で最大野党の共和党が第1党となり、政権交代が予想される。ただ、同党は単独過半数に届かず、政権樹立に向けた連立協議は難航が予想されそうだ。
アイルランド下院総選挙は11日までに開票作業が終了。共和党は2016年の前回選挙から6議席減らしたものの、38議席で第1党となった。
英領北アイルランドとの統一を公約に掲げる野党シン・フェイン党は共和党と1議席差の37議席を獲得。前回選挙の23から議席を大幅に増やした。同党にとって「歴史的な躍進」(英メディア)で、アイルランド統一の機運が高まるとの見方がある。一方、バラッカー首相の率いる中道右派の少数与党、統一アイルランド党は前回選挙より15議席減らして35議席にとどまり、第3党に陥落した。大敗を受けて、バラッカー氏の内閣は退陣する見通し。
共和党などは連立協議に向けた協議を近く開始する。ただ、主要3党の混戦となったことで今後の連立協議は決着までに数週間かかる可能性が指摘される。
協議が長引く要因の一つが、第2党となったシン・フェイン党の存在だ。
シン・フェイン党は政権に加わりたい意向を表明している。だが、同党の前身がアイルランド統一を求めて過去にテロ行為を繰り返したアイルランド共和軍(IRA)であることから、共和党は連立に前向きではない。共和党のマーティン党首はこれまで、シン・フェイン党について「深刻な不一致が存在する」と話していた。
総選挙はバラッカー氏による議会解散により実施された。