【シンガポール=森浩】新型コロナウイルスに感染した疑いのある乗客がいるとして日本などが入港を拒否したクルーズ船「ウエステルダム」の乗客が14日、カンボジア南部シアヌークビル港で下船を開始した。港では中国寄りの態度を鮮明にするフン・セン首相が出迎え、「(感染者や感染の恐れがある人を)差別するときではなく、連帯を示すときだ」と話し、暗に日本などの対応を批判した。
この日は乗客乗員約2300人のうち、乗客約400人が下船。今後、数日に分けて全員が下船し、帰国の途につく見通し。カンボジア当局は体調不良を訴えた乗客約20人の検査を実施したが、陰性だったため上陸を認めた。日本の外務省によると、日本人5人(乗客4人、乗員1人)も体調に問題はないという。
中国との親密な関係を維持したいカンボジアは新型コロナウイルスの流行を受けても、中国からの直行便の運航を継続。「ウイルスの脅威を軽視している」(AP通信)とも指摘される。フン・セン氏は「カンボジアの全員がマスクを取るべきだ」とも主張しており、自らもマスクなしで乗客らを出迎えた。
ウエステルダムは1日に香港を出発して日本に向かったが、日本政府は新型肺炎を発症した疑いのある人が確認されたとして事実上入国を拒否。フィリピンやタイ、米領グアムも入港を拒んだ。