東日本大震災直後に被災各地を訪問、日本重視の政治家・台湾の頼清徳氏 矢板明夫





2月15日、台北市内で産経新聞の単独インタビューに応じる頼氏

 親日的といわれる台湾の与党、民主進歩党の中でも、頼清徳氏は日本との関係を最も重視する政治家の一人として知られる。東日本大震災直後の2011年4月、台南市長だった頼氏は、市民の募金を自ら持参して友好関係にある仙台に駆け付け、被災者たちを直接見舞った。さらに2カ月後の同年6月、台南市民ら約300人と一緒に同じく観光交流のある栃木県日光市を訪問。当時の日光市は放射能汚染の風評被害で、観光業が大打撃を受けていた。悪い噂を打ち消すことが訪問の目的で、先頭に立った頼氏は「行こう日光」と大きく書かれたTシャツを着ていた。

 日本に対して理解があり、日本の政界、財界に知己が多い頼氏が副総統に当選したことは、今後の日台関係に大きなプラスになることは言うまでもない。5月20日に就任する予定だが、それまでは、頼氏は一人の民間人にすぎない。本来ならば、日本を訪問することは外交上何の問題もなく、中国から文句を言われる筋合いはない。現に頼氏は2月上旬に米首都のワシントンを訪れ、米国の要人と会談している。

 しかし、日本政府や外務省の中には、中国を刺激することを恐れ、特に習近平国家主席の国賓としての訪日への影響などを考慮して、台湾との要人交流に反対する勢力がある。頼氏の日本訪問が実現できるかどうかは、今のところ、流動的だと言わざるを得ない。

 中国発の新型コロナウイルスの感染が拡大する中、日本と台湾が連携して対応することが必要だ。次期副総統であると同時に、公衆衛生の専門家でもある頼氏の訪問を受け入れることは、世界保健機関(WHO)のメンバーではない台湾への支援であり、日本の国益にもかなう。ぜひ実現してほしい。(台北 矢板明夫)

 

 頼清徳氏(らい・せいとく) 1959年、現在の新北市生まれ。台湾大医学部を卒業後、米ハーバード大で修士号を取得。内科医から政界に転じ、立法委員(国会議員に相当)、台南市長を経て、2017年9月から19年1月まで行政院長(首相)を務めた。今年1月の総統選で副総統に当選した。



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