18歳のビリー・アイリッシュが今年のグラミー賞で最優秀アルバム賞など、史上最年少で5冠を受賞して話題になった。音楽面だけでなく、性差別を回避するためのダボダボの衣装が、有名ファッション誌から次世代のファッションとして注目されている。これまでの人気女性シンガーたちが体のラインにぴったりしたセクシー衣装を選んでいたのとは一線を画す。
受賞対象となった初のフルアルバム「ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?」の制作方法も、これまでのメジャー・ミュージシャンと異なる。ビリーの兄であるフィニアスとともに自宅のベッドルームで作ったのだ。すでにアンダーグラウンド・シーンでは当たり前だった“ベッドルーム・ミュージック”が、ついにメジャーに浮上したといえる。録音機材さえそろえれば、誰でも彼女のようになれる可能性を示した。
この1月で16歳になったグレース・ヴァンダーウォールは、13歳でデビュー。新作「レターズ ヴォリューム1」が発売されたばかりだ。音楽だけでなく、今年日本公開予定のディズニー映画「スターガール」では主演に抜擢(ばってき)されている。
アメリカだけでなく日本からは20歳になった山崎彩(あや)音(ね)が世界でブレークし始めている。17歳、最年少(当時)でフジロックフェスティバルのステージに立った彼女は、世界中に楽曲を配信する英国のレコード会社、AWALの超難関オーディションに、日本人女性として初合格。すでにヨーロッパやアフリカなどのラジオで人気となっている。
こういった若い世代に共通しているのは、大ヒットを生んでセレブ的存在を目指していない点だ。ただありのままに、そして少し辛口に自分や現在の世界を歌う。人に聴かせるためでなく、自分や世界をシンプルに表現している。これが、新世代のリアルなのだ。(音楽評論家)