“火中の栗”押し付けあう業界 手腕試される電事連新会長の池辺九電社長





九州電力の池辺和弘社長(中村雅和撮影)

 「何も話はされていないが、仮に頼まれればノーとは言わない。それが九州男児だ」

 電気事業連合会(電事連)の新会長に就く見通しになった九州電力の池辺和弘社長は、電事連会長のポストについて周囲にこう語り、意欲を見せていた。

 業界を代表し、政官との利害調整を担う電事連会長は長年、東京電力、関西電力に加え、中部電力をあわせた3社の社長が就任してきた。

 今回の人事はこの慣例を破る形になる。新会長に池辺氏を推す声は昨年、すでに複数の電力会社首脳から上がっていた。それは“火中の栗”を押し付けあうしかない業界の苦境の象徴でもある。ただ、一方で業界内では既定路線とも受け止められ、さらに九電への期待もあった。

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 九電は全国の電力会社でいち早く保有する原発を再稼働させた。また、テロ対策施設の建設でも関電とともにフロントランナーだ。さらに再生可能エネルギーの大量導入に伴う出力制御など、電力各社が将来直面するであろう問題に先んじて取り組んでいる。

 池辺氏の手腕への評価は高かった。社長就任1年を待たず、玄海原発2号機(佐賀県玄海町)の廃炉問題をはじめ経営上の重い課題に結論を出した。さらに電気事業を補う収益の柱作りの種をまいた。ともすれば「役所以上に役所」などと揶揄(やゆ)された社風を普通の会社にするために変革を促した。

 電力業界が直面する問題は深刻だ。一連の電力システム改革は4月の発送電分離で制度が整う。しかし、「中長期的な設備投資が滞りかねない」(九電幹部)との懸念は根強い。また、国は現在のエネルギー基本計画で原発を重要なベースロード電源と位置付けるものの、「新増設に対してのスタンスは不透明で、電力会社に丸投げし、責任逃れをしている」(関係者)状況だ。さらに、石炭政策でも経済産業省と環境省の間でちぐはぐさが目立つ。

 ある電事連関係者は「業界をまとめ政官に言うべきことは言わなければならない。今それが可能なのは、すねに傷がない九電ぐらいだ」と話す。

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