白内障や慢性甲状腺炎を発症し、経過観察とされた被爆者を原爆症と認定するかどうかが争われた3件の訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は25日、原告らの請求をいずれも退けた。その上で、原爆症認定には「経過観察自体が病気を治療するために必要不可欠で、積極的な治療行為の一環と評価できる特別な事情が必要だ」との初判断を示した。被爆者の原告女性3人の敗訴が確定した。5裁判官全員一致の結論。
国が認定する原爆症は(1)放射線起因性(症状が被爆に起因)(2)要医療性(現在も医療が必要な状態)-の2つが認められることが要件。手術などの治療を受けない経過観察を要医療性と解釈するかどうかで、2審広島、名古屋、福岡の各高裁で判断が分かれていた。
第3小法廷は、経過観察とされた人の原爆症認定について「病気の悪化や再発による結果の重大性など医学的にみて経過観察が必要とすべき事情を総合考慮し、個別に判断すべきだ」と判示。原告らはこうした要件を満たさないと判断した。
平成30年2月の広島高裁判決は「定期的な経過観察を受けていることは診察に該当する」として要医療性があると判断。同年3月の名古屋高裁も「経過観察の必要性があったため要医療性は否定できない」とし、いずれも原告勝訴とした。一方、昨年4月の福岡高裁判決は「再発や悪化の可能性が高いなど特段の事情があったとはいえない」と要医療性を認めず、原告敗訴としていた。