【ワシントン=塩原永久】米連邦準備制度理事会(FRB)が緊急利下げした3日、米株式市場は大幅下落で取引を終えた。臨時の連邦公開市場委員会(FOMC)を2008年の金融危機以来、11年ぶりに開催したことで、逆に市場の不安心理をあおったためだ。主要政策金利の下限を1・0%まで下げたFRBは利下げ余地が限られ、新型コロナウイルスの悪影響が深刻化した場合には「弾薬切れ」の懸念も出てくる。
臨時のFOMC開催による利下げは異例で、投資家に08年の「リーマン・ショック」並みの深刻な事態を連想させる結果となった。
記者会見したパウエル議長は、感染拡大の企業への悪影響が「初期段階」と指摘し、経済活動への打撃が今後さらに表面化する恐れを示唆し、追加利下げの可能性も排除しなかった。
一方、利下げで「感染者の増加を抑えたり、支障をきたしたサプライチェーン(部品供給網)を修復することはできない」と指摘し、新型コロナによる景気影響をめぐり、金利引き下げの効果は限られるとの認識を強調した。
米国内ではアップルやマイクロソフトなどの業績下方修正が発表されたが、米企業の販売や生産への打撃がどこまで大きくなるかは見通せない。国内の市中感染の事例が増えており、米政府や地方行政組織が、経済活動を制限する感染防止策に踏み切れば、景気下振れ懸念が一段と高まる。
FRBは、新型コロナウイルス問題が持ち上がる前までは、昨年実施した3回の利下げ効果を見極める「様子見」方針を表明していたが、底のみえない「危機」に対し、早々に大幅利下げの切り札を切った。だが、市場が冷ややかな反応を見せる中、ゼロ金利を含めた超低金利政策への回帰すら視野に入れた政策運営が迫られることになった。