東京電力福島第1原発事故から9年が経過するのを前に、東電福島第1廃炉推進カンパニーの小野明・最高責任者が産経新聞のインタビューに応じた。原発敷地内にたまり続ける汚染水を浄化処理した「処理水」について、海洋など環境への放出が検討されるも風評被害の懸念が根強いことに触れ、「(処理水の)性質を理解してもらえば風評被害はかなり抑えられる」と自信を見せた。
--国の小委員会が検討している処理水の処分方法を「水蒸気放出」「海洋放出」の2案に絞り込んだ
「デブリ(溶融核燃料)の取り出しと異なり、この2案のやり方は技術的に確立されている。新しい技術開発も必要ないと思う」
--2月に福島第1原発を視察した国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が、風評被害防止の支援を申し出ていた
「処理水に含まれる(放射性物質のうち人体への影響が比較的小さいとされる)トリチウムについて、社会の人々は多分知らない。科学的な性質、人体への影響などを理解してもらうことで、風評被害はかなり抑えられると思っている。そういうところにIAEAが関与してくれるのであれば非常に心強い」
--昨年末に政府が示した「廃炉と復興の両立」という言葉をどう捉えるのか
「廃炉の最終形はいろいろな人と意見交換しながら形づくっていくものだ。福島の復興については、廃炉の関連産業で地元が活性化し、新技術が生まれるのであれば絶対にやりたい。ほかの地域、産業に波及して『メイドイン浜通り』みたいな技術が広がっていけば、ものすごく大きな意味を持つと思う」
--廃炉作業は10年目を迎える。この1年をどのように位置づけるのか
「(4月に行うミス防止など品質管理を強化する組織改編について)きちんと本来の目的を果たせるよう定着させる年になる。この1、2年でつくり上げる基礎は、今後ずっと続く廃炉作業にとって非常に重要なものになるだろう」