【小菅優 音楽と、夢に向かって】新型コロナで気付く音楽の尊い役割


 新型コロナウイルスで世界中大騒ぎになってしまいました。気ままな日常を壊しに、一気に押し寄せてきた波のようで、不安が続く毎日を皆さまお過ごしだと思います。

 さて、私たち音楽家は、常に大衆の集まるところに出るのが仕事ですから、イベントが自粛となると、仕事がどんどんキャンセルになってしまいます。私自身、4月の日本でのツアーが全公演中止になってしまいました。

 準備万全で楽しみにしていた公演が中止になるのは残念ですが、もちろん、人々の健康が第一です。とにかく早く終息してくれることを祈るしかありません。

 でも、オンライン配信でのコンサートや音楽家の集いなどもあり、こんなときでも明るく対応し、お客さまに良い音楽を提供しようと、できる限りのことをしている音楽家や音楽関係者の方々を見ると、こちらもうれしくなります。

 来週公演で行くスイスでは、スイス政府から1千人以上のお客さま収容のイベントやコンサートを中止する勧告が出ましたが、スタッフを含め1千人以内にして、私が出演する公演は決行することになっています。

 このキャンセルが続く日々、なぜだか3・11(平成23年の東日本大震災)を思い出しました。公演で弾かないことが続くと、音楽家は自身を発散する場所がなくなり、無性に演奏したくなります。普段コンサートで弾かせてもらっていることがどんなにありがたいことか、痛いほど気づかせられます。

 3・11の時は、友人が自発的に始めたチャリティーコンサートに参加させてもらいました。他の音楽家と一緒に演奏することで、不安で暗くなっていた私たちも勇気づけられました。

 世の中が大変なときに、音楽が何をできるのかと疑うこともあります。でも自分にはそれしかない。こういうときだからこそ、音楽にすがりたくなり、練習が楽しくてしようがない。開催される公演で全力を尽くそうと、今一段と燃えています。(こすげ・ゆう=ピアニスト)



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