東日本大震災の発生から9年となった11日、追悼行事の多くが新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて中止となる中、栃木県栃木市万町の近龍(きんりゅう)寺で追悼法要が営まれ、参列者が犠牲者の冥福を祈った。
近龍寺では震災の翌年から毎年、法要を行っている。今年は新型コロナウイルスの影響が懸念されたものの、本堂の扉を開放して換気をするなど、感染対策をして実施した。松涛(まつなみ)孝佳住職(53)は「復興はまだまだなのかもしれないが、少しずつ進んでいる実感はある。震災を忘れないように、これからも毎年行っていきたい」と話した。
約20人の参列者は境内の鐘を鳴らし、東北地方を向いて祈りをささげた後、本堂で犠牲者に焼香。被災地の復興と犠牲者の冥福を祈っていた。
県によると、東日本大震災の被災地から避難し、現在も県内で生活している被災者は2800人余り。福島県から宇都宮市に避難してきた50代の女性は「私たちにとって故郷は空気のようなもの。そこから離れているのは、手足をもがれたような思い」と打ち明ける。女性は「まだ故郷に帰れていない人が大勢いるが、それぞれ前を向いて重みに耐えるしかない」と話し、復興がいまだ道半ばであることを語った。(根本和哉)