「こんな夢を見た」というくだりから始まる夏目漱石の短編集を、漫画家の近藤ようこさんが漫画にした作品。岩波現代文庫創刊20周年の節目に伴う文庫化で、新たに原作へのオマージュ作品「第十一夜」を描き下ろした。
死んでしまった美しい女性との100年後の再会、背中におぶったわが子と逃れられない前世の因縁、明治の世まで生きて仁王を彫り続ける仏師運慶…。漱石が生んだ怪しくも美しい世界を、漫画として視覚的に味わう経験は楽しいものだ。自身が原作を読み、思い描いていたイメージと比べるのも面白い。(近藤ようこ漫画、夏目漱石原作、岩波現代文庫・780円+税)