【ニューヨーク=上塚真由】新型コロナウイルスの感染が加速度的に広がる米国で、医療用品が枯渇し、病床も不足するという懸念が日増しに強まっている。イタリア北部などで起きた「医療崩壊」を防ぐため、感染者数が全米最多のニューヨーク州では連日、あの手この手で医療物資や人手の確保を呼び掛けている。
「最も必要なのは人工呼吸器だ。人工呼吸器とは、この(ウイルスとの)戦いにおいて、第二次大戦でのミサイルだ」。ニューヨーク州のクオモ知事は20日の記者会見でこう強調。第二次大戦時の有名な宣伝ポスターも画面に掲示して、ウイルスから人命を救うカギとなると、人工呼吸器確保の重要性を訴えた。
知事は現在約6千台を保有しているが、今後は3万台が必要になるとの見通しを明らかにした。全世界で不足している状態で調達は困難。使用しない人工呼吸器を所有する医療施設に対し、買い取りなどを呼び掛けた。
また、マスクや手袋、ガウンなどの医療用品も足りていない。米紙ワシントン・ポストによると、スキーのゴーグルやバンダナなどを代用している病院もあるといい、ニューヨーク市のデブラシオ市長は20日、「医療用品は2、3週間で何もなくなってしまう」と現状を説明した。
米国ではインフルエンザも流行。米疾病対策センター(CDC)によると、昨年10月以降に推定2万3千人が死亡、累計で約39万人が入院したといい、病院はすでに手いっぱいだ。経済協力開発機構(OECD)によると、人口1千人あたりの米国の病床数は2・8。これは新型コロナによる死者数が深刻なイタリア(3・2)、中国(4・3)と比べても少ない。クオモ氏は5万台の確保を目指し、大型の展示センターや大学寮などを改装して病床を増やす考えで、トランプ政権も1千の病床がある米海軍の病院船をニューヨーク市の港に派遣することを決めた。
約2750万に上る米国の無保険者の対応も急務だ。「新型コロナにかかっても、高額な医療費を支払いたくない」と不安に思う人も少なくなく、感染者の十分な隔離措置が取られなければ、拡大は食い止められない。米議会では、無保険者の感染検査費の補償を盛り込んだ法案が審議されている。