トランプ米大統領が中国からの輸入品に追加関税を課す大統領令に署名してから、22日で2年。激化を続けた米中の貿易摩擦は、今年1月に第1段階の貿易協定に署名して「一時休戦」した。ただ、新型コロナウイルスの流行が中国から世界に広がる中、米中関係は緊張含みとなっている。
トランプ氏は米中の「第1段階」貿易協定について「画期的な合意だ」と成果を誇示してきた。だが、新型コロナの打撃を受けた米産業界からは事業の重荷となる対中制裁関税の解除を求める声が強まっている。「第2段階」合意に向けた交渉カードとして政権が温存した関税が景気減速を加速させかねないジレンマをトランプ氏は抱えている。
米政権は2月に発効した第1段階協定に沿って、中国が知的財産権保護などに取り組んでいるかを見守る構え。米通商代表部(USTR)は中国政府との紛争処理組織を立ち上げた。
一方、米国は中国からの輸入品3700億ドル(約41兆円)分にかけた追加関税を維持。関税撤廃を求める中国を第2段階の協議に引き出すためだ。
米景気は好調な消費に支えられて関税の逆風をしのいできた。だが、ここにきて新型コロナの直撃で米国では中小事業者を中心に深刻な経営不安が出てきた。
中国からの輸入品に関税分が上乗せされるため、輸入業者はコスト負担が重くなる。米アパレル靴協会の幹部は「業界で年35億ドルの関税負担だ。ただちに関税を撤廃してほしい」と米テレビで訴えた。新型コロナで景気の下振れ懸念が強まる中、多くの産業団体が政権や議会に対して関税の撤廃や一時休止を働きかけている。
トランプ氏は18日の記者会見で、関税撤廃について「理由がない」と否定した。ただ、対中関税を撤廃すれば国内の企業活動を後押しするのも間違いない。
景気悪化の見通しが一段と深刻になれば、関税解除を条件とした「第2段階」協議を早期に始める機運が米国側から出てくるシナリオも想定される。
(ワシントン 塩原永久)