新型コロナウイルスの感染拡大は、欧米の新聞業界にも大きな打撃を与えている。外出規制などの影響で、多くの販売店が閉店に追い込まれたり、ニューススタンドの新聞が売れなくなったりしたためだ。広告収入の減少が見込まれ、取材記者は在宅勤務を余儀なくされている。これとは対照的に、インターネット配信のニュースは好調で、明暗を分ける形となった。(パリ 三井美奈、ニューヨーク 上塚真由、ロンドン 板東和正)
フランスの新聞業界は、新型コロナによる外出禁止令などで人手不足となり、新聞売店の閉鎖が相次いでいる。調査会社の統計では、16~22日の1週間で紙の新聞の売り上げは前年同期比で42%減少した。
新聞売店は政府の閉店命令の例外として営業が認められているが、仏紙によると全国で1割以上が閉店。パリで営業を続けるのは全体の4割になった。
ルモンド紙の広報担当、ジル・ファンコート氏によると、「空港や駅を中心に、新聞売店が閉店したのが大きい」と話す。業界にとって、さらなる不安は、郵便局が時短営業の方針を示したこと。同紙を含めて仏各紙は宅配を郵便に依存しているためだ。
一方、ウェブ版のアクセスは急増した。
調査機関によると、ルモンド紙のウェブ版アクセス件数は通常平均の約2・2倍、フィガロ紙は1・2倍に増加した。携帯アプリのアクセス増加幅はさらに大きく、それぞれ2・8倍、2・1倍だ。
国民の在宅時間が延び、テレビ視聴時間は急増した。16~22日の1週間、1日当たり平均視聴時間は4時間48分で、昨年同期より1時間17分増えた。22日の日曜日は5時間15分に達し、2006年以降、最長を記録した。
新聞各紙は、外出自粛令を尊重し、多くはテレワークに切り替えている。ルモンド紙は、各記者、編集者が自宅から、ネット回線で編集会議に参加しているという。テレビのニュース番組は、識者やゲストの自宅とスタジオを結んでテレビ中継を行っている。
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