【ニューヨーク=上塚真由】新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増える米東部ニューヨーク州で、対策の指揮を執るアンドリュー・クオモ知事(62)の支持率が急上昇している。記者会見での発言が論理的で人間味があふれると共感を呼び、全米でも注目の的だ。ただ、たった1カ月で7万人超の感染者を出した責任を指摘する声も出始めている。
米シエナ大が3月22~26日に同州内で実施した世論調査によると、87%がクオモ氏の新型コロナへの対応を評価すると回答。トランプ米大統領を評価すると答えたのは41%だった。クオモ氏の支持率は71%で、前回調査(2月16~20日)の44%から大幅にアップした。
支持率急増の要因はコロナ禍が発生して以来、毎日開いている記者会見。米主要テレビ各局は連日、生中継し、トランプ氏の会見と同様の扱いだ。パワーポイントを用いて、感染者数や検査数、入院患者数、集中治療室(ICU)にいる人数まで詳細なデータを開示し、深刻な状況も率直に説明する。時折、「疲れたときは、医療関係者や食品店などで休みなく働く人のことを考えよう」(3月26日の会見)などと穏やかな口調で語りかける。
31日には自身の弟で米CNNテレビのキャスター、クリス・クオモ氏(49)が感染したことを公表し、「賢さや裕福さ、年齢に関係なく、このウイルスは誰もが影響をうける」と強調した。外出が制限されている住民には「的確な情報は信用できるし、孤独感が増している中、知事の発言に勇気づけられている」(40代の女性)などと語る人も多い。
民主党のクオモ氏は州司法長官をへて2011年に州知事に。新型コロナ対策ではトランプ氏への対応も「冷静」(米メディア)と一定の評価を得ており、30日にはトランプ氏が「大統領選に出ていれば、寝ぼけたジョー(民主党候補指名争いで最有力のバイデン前副大統領)よりも良い候補だっただろう」と発言。これに対しても、クオモ氏は「政治問題化している場合ではない」などとかわした。
ただ、州内では3月1日に初めて感染が確認され、同31日時点の感染者は7万5795人に上る。同州の最初の措置は13日に500人以上の集会禁止を命令したことで、クオモ氏も当初から食い止め策に積極的だったとはいえず、一部の米メディアでは「国際都市としては、1月に中国で感染が始まった時点で何らかの計画を立てるべきだった」と初動の遅さを批判する声も上がっている。