「警視庁捜査一課9係」時代から数えて15年目。「特捜9」となってから3年目のシーズンを迎えた。主演は「9係」時代の渡瀬恒彦から井ノ原快彦に代わったが、井ノ原演じる浅輪直樹を中心に、個性派の面々の活躍がまた毎週始まる。
「15年も変わらずにやってこられた。(放送の)3カ月は1年のうちで、濃密な人間関係の中で過ごせる。それぞれの家族のことや結婚したとかいろんな出来事もみんな知っているから、人間関係の距離感はグッと近い。この現場に来るたびに精神的にも健全になって。1年間のバロメーターのような番組」と、演じる矢沢英明としての心構えはバッチリだ。
主演の井ノ原については「イノッチはとにかく大人。年齢的には津田(寛治)さん、吹越(満)さん、そして俺のほうが上だけど、イノッチが現場で俯瞰(ふかん)し、優しい目でスタッフを含めまとめてくれるから、安心して自由にやれている面もある」と全幅の信頼を置く。
昨年放送のシーズン2では、吹越演じる青柳靖とのコンビがシャッフルされるケースも見られたが、「今回は原点回帰。どっぷりと青柳・矢沢コンビを見せますよ」と笑う。
長く組んでいるコンビゆえに「お互いに、このせりふは青柳は言わねえな、とか、このせりふは言いたくねえだろうな、とか、大体のことは何となく分かる」という。テスト段階で「お互いにやりたいことを一度試す。アドリブが多いように見えるかもしれないけれど、必ず2人の間で決めてリアクションもしているんですよ」と明かす。
今回の撮影では、リンゴ園に捜査しにいくシーンがあり、リンゴの枝を青柳が引っ張ってそれを矢沢の腕に当てるというシーンを2人でつくった。テストで「痛え!」という矢沢のリアクションに当初、スタッフは「大丈夫ですか」と驚いたという。ただ、そういうあうんの呼吸が発揮された撮影が続くと、「2人のボルテージが上がる瞬間があって。今日も幸せだったなあ」と感じるという。それでも「コンビとしてはまだ熟したとは思っていない」と高みを目指す。
「毎回、新たな気持ちでやっている。こんな変わった刑事ドラマがあるんだと言ってもらえるのが最高の褒め言葉」といい、コンビの面白いシーンに対し、そんな褒め言葉をもらえる芝居が今回も見られそうだ。 (文化部 兼松康)
たぐち・ひろまさ 昭和42年生まれ。福岡県出身。63年に劇団「PROJECT TENSION」を結成。平成元年に小浦一優(芋洗坂係長)とともに「テンション」を結成し、お笑いコンビとして活動。俳優としても映画「シコふんじゃった。」(4年)や「マスカレード・ホテル」(31年)、NHK連続テレビ小説「ふたりっ子」(8年)、大河ドラマ「平清盛」(24年)など幅広く活躍している。