未知の感染症に世界経済もろく 日本デフレ再燃恐れ





新型コロナウイルス(オレンジ色)の電子顕微鏡画像=米国立アレルギー・感染症研究所提供

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が、戦後最悪の景気後退を招く公算が大きくなった。各国が緊急経済対策に計8兆ドル(約860兆円)を投じたにもかかわらず、さらに景気減速が強まり世界経済の失速が長期化する恐れがある。未知の感染症に対しもろくも崩れる世界経済の姿があらわになった。国内外で需要が急減することで、日本では危機対応のめどが立った後に物価が持続的に下落する「デフレ」がまた深刻化する恐れも指摘されている。(田辺裕晶、ワシントン 塩原永久)

 国際通貨基金(IMF)が懸念するのは感染収束が後ずれし外出禁止などの対策が長引くことや、来年にかけてパンデミックの「第2波」が到来する事態だ。特に公衆衛生対策に充てる財源が乏しい新興国や貧困国で新型コロナの流行が深刻化すれば、感染が飛び火して先進国が再び対策強化を迫られる恐れがある。

 感染収束後の景気も弱含みそうだ。米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン前議長は討論会で、「(リーマン・ショックなど)多くの金融危機後に(それ以前より)成長が弱まることがあった」と指摘。危機克服に当たり巨額の負債を抱えた企業が新規採用や設備・開発投資を抑制することで、成長力がそがれる事態に懸念を示す。

 一方、日本も海外経済の失速で製造業の輸出が下振れし、自粛要請でサービス業など非製造業の国内需要も蒸発。産業界はほぼ総崩れだ。IMFが予測した今年の実質成長率5・2%減はリーマン後の2009年(5・4%減)に匹敵する。

 日本経済研究センターが緊急事態宣言後にまとめた民間エコノミストの経済予測では、四半期別で4~6月期まで3四半期連続のマイナス成長を見込む。消費者物価の上昇率(生鮮食品を除く)も7~9月期から来年1~3月期まで3四半期マイナスが続くとみる。

 コロナ危機では、自然災害とは異なって生産設備は被害を受けていないため、供給面の打撃は限定的だ。感染収束後、蒸発した需要の回復に失敗すれば、モノが売れ残り、値段が下がり、経済が縮小する。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」で克服したかにみえたデフレが、再び息を吹き返す恐れがある。



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