新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、5月6日に予定されていた札沼線北海道医療大学-新十津川(47・6キロ)の最終運行が前倒しされる。JR北海道が定期列車の最終運行を4月24日に繰り上げると発表した。大型連休に全国から鉄道ファンが詰めかける事態を避けるのが狙いだ。85年の歴史に幕を下ろす「ラストラン運行」は、同27日に沿線住民のみで行う。
同社の島田修社長は15日の記者会見で、「本州各地の鉄道ファンに申し上げる」として、沿線町外からの乗車、来駅、沿線での写真撮影を控えるよう異例の来場自粛要請を行った。
札沼線は、札幌市中央区の桑園駅から新十津川町の新十津川駅までを結ぶ路線。昭和10年に全線が開通し、北海道医療大学-新十津川は上下15本が運行されている。新十津川駅は近年、出発便が午前中1便のみの「日本一早い最終列車が出る終着駅」として鉄道ファンに親しまれていた。
だが、赤字のためJR北海道単独では維持が難しく、平成30年、同社と当別、月形、浦臼、新十津川の沿線4町で今年5月7日の廃線を決めた。
廃止の近い路線には鉄道ファンが集まるため、JR北海道は感染拡大防止策としてゴールデンウーク期間の5月2~6日を全車指定席とし、密閉・密集・密接の「3密」を避ける計画だった。しかし、政府による緊急事態宣言が出され、対象地域などからの来場自粛を要請せざるを得なくなったとしている。
町外からの来場自粛に加えて、発熱症状のある場合の乗車の自粛や、乗車時にせきエチケットのためのマスク着用も要請。窓を開けて換気するため、暖かい服装での乗車も呼びかけた。
島田社長は会見で「地元には廃線の苦渋の決断をいただく中、さまざまな思い出とともに全国のファンと有終の美を飾るための準備をしていただいており、まことに申し訳ない」と陳謝。「今後さらに不測の事態が生じれば、地元と最終運行を見送ることさえできなくなるかもしれない」と述べ、鉄道ファンに繰り返し理解と協力を求めた。