新型コロナウイルスの感染拡大と東京五輪・パラリンピックの1年延期に伴い、国内展示会の“殿堂”東京ビッグサイト(東京都江東区)の利用制限が長期化しそうだ。ビッグサイトの一部展示場が令和3年11月まで利用できなかった場合、五輪、新型コロナを合わせた損失額は約4兆円との試算もある。出展する企業にとっては営業機会の損失となり、経営に大きな打撃だ。
「展示会業界はトリプルパンチの大打撃。死活問題に直面」
業界団体の日本展示会協会は4月7日のプレスリリースで、苦境をこう訴えた。東京五輪の開催、新型コロナに加え、五輪延期の影響で、ビッグサイトの展示会が通常通り開催できない場合、「展示会業界、その周辺企業への甚大な被害はもとより、中小企業にとっては死活問題となる」と記された。
展示会には、設営業者や電気工事、コンパニオンなどの派遣会社、ケータリングなど、さまざまな業界がかかわる。
同協会の試算によると、今年11月までの延べ20カ月で、休止・延期された東京ビッグサイトのイベントの主催者、支援企業、出展社の合わせて8万3000社以上が約2.5兆円の売り上げを失う。さらに、五輪延期に伴う利用制限で影響を受けるのは、5万社以上、約1.5兆円に上るという。
東京ビッグサイトには、展示面積が最も広い東、西、南、そして約2キロほど離れた仮設の青海(あおみ)の4つの展示場がある。このうち、東展示場が東京五輪のメディアセンターとして活用される。現在、西、南、青海の3展示場は利用できるが、今後、警備上の理由や改修のために順次利用できなくなる。東京五輪が予定通り開催されれば、今秋から利用が再開するはずだった。五輪延期を踏まえた対応について、東京ビッグサイトの担当者は「現時点で決まったことは何もない」と話す。
東京ビッグサイトによると、今年10月から4年3月末まで、すでに150件のイベントが予約済み。これ以外に日程調整中のイベントが約250件あるという。利用制限期間が伸びる場合、さらに多くのイベント主催者との調整が必要となる。
東京ビッグサイトは、国内外を問わずさまざまな業界にとって、大商談会の場として知られている。
日本工作機械工業会(日工会)は、12月7~12日、第30回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2020)を開く予定だ。「機械をつくる機械」とも称される工作機械の見本市としては世界最大級の規模で、平成30年の前回は国内外の1000社超が出展、約15万人が来場した。
元年11月に出展の申し込みを締め切っており、今回の事態に日工会の担当者は「現時点では、予定通りの開催に向けて準備を進めざるを得ない」と、複雑な心境だ。
営業担当の従業員を何人も抱えられない中小企業にとっては、新規の商談の機会を逃すことになり業績に大きな影響が出かねない。