新型コロナウイルスの感染拡大は依然続いているが、世界各国では対策としてとられてきた制限を緩和し、経済活動を徐々に再開しようとする動きが出てきた。これ以上経済を冷やしては、そもそもウイルスとの戦い以前に人間の存立が危ういという考えが背景にあるが、時期尚早だとする主張も多い。米国ではメディアの報道スタンスによって賛否が割れ、フランスでは制限の弊害を説きつつも、再開には慎重論が根強い。
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■米国 検査拡充を条件、賛否両論
米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)は17日の社説で、トランプ米大統領が16日に示した経済活動再開に向けた連邦政府指針について、「さらなる感染検査が必要だが、方向性は正しい」と述べる。
同紙は経済報道を主軸とする立場から、早期に経済活動を再開させる必要性を以前から訴えてきた。新型コロナ対策として実施された外出制限や集会規制で、膨大な失業者が発生し、急激な景気悪化が起きているためだ。
社説は、地域での感染の広がりを把握するために、十分な感染検査をすることを前提として、経済再開の具体的な条件を提示した連邦政府指針を前向きに評価した。
連邦政府指針は、感染増加の傾向がみられない地域から3段階で外出禁止などの対策を緩和させていく内容だ。ただ、実際の指針運用は州政府に任せることにしている。
トランプ氏は、州政府に対して経済再開を一律に実施させる「絶対的な権限」が大統領にあると言及したことがあった。WSJは、トランプ氏が姿勢を転換し、指針運用を州知事らに一任したことを、州の権限を重視する「連邦制の伝統を尊重した」とした。
一方でWSJは、感染検査を実施する各州など地域の保健衛生当局が、検査担当者や検査用品の不足に不満を示していることに言及。検査体制の拡充が重要だと指摘している。ただ、次第に米国内の検査能力が高まっていることから、感染者数の上昇がみられない州では経済活動を順次、再開していくべきだと改めて主張した。