世界の中央銀行の新型コロナウイルスとの闘いは混乱する金融市場の沈静化から、企業の資金繰り支援へとステージを移しつつある。主要中銀が一斉に企業の金融支援に動くのは、資金繰りに窮した企業の信用力が低下し、それが金融システム全体に波及する事態を警戒しているからだ。
日本銀行が27日に打ち出した政策も、目玉の一つは企業金融支援の強化だ。コマーシャルペーパー(CP、無担保の約束手形)や社債の買い入れ枠を合計20兆円まで増やし、対象や条件も緩和した。企業向け融資の支援制度も拡充した。
「リーマン・ショック時よりも厳しい面がある」。黒田東彦総裁は同日の記者会見で、企業の資金繰りに関する認識をこう語った。実際、企業が事前に取り決めた金額の範囲内であれば迅速に借り入れができる「融資枠」の設定を金融機関に求める動きが相次ぐ。
海外中銀では、米連邦準備制度理事会(FRB)が今月、中小企業の支援策として、最大2・3兆ドル(約250兆円)の資金供給を打ち出した。格付けが下がった企業の社債購入や企業への事実上の融資にも踏み込んだ。欧州中央銀行(ECB)は4月上旬以降に投資不適格となった社債も買い入れの対象に加えた。
東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは「日本の企業金融は米国ほど危機的ではないものの、日銀は打てる手が限られる中で、早めに企業に安心感を与えるための措置を打ち出した」と評価している。(米沢文)