【ロンドン=板東和正】新型コロナウイルスの感染拡大による運航休止の影響で、欧州の航空業界が経営危機に陥っている。大規模なリストラを迫られる中、出資などの救済措置を政府に求める動きが広がっているが、格安航空が支援交渉に難航する例もあり、大手との格差が生じている。
「36年前の初飛行以来、多くの嵐に立ち向かってきたが、新型コロナほど破滅的な出来事はなかった」
英大手ヴァージンアトランティック航空のシャイ・ワイス最高経営責任者(CEO)は5日、声明を発表し、苦しい胸の内を明かした。同航空は同日、全従業員の3分の1程度に当たる3150人を削減すると発表した。新型コロナの拡大を抑制するために実施されている移動制限により業績が打撃を受け、人件費などのコスト削減が必要になったためだ。欧州では、アイルランドに本拠を置く欧州格安航空会社(LCC)最大手ライアンエアも1日、パイロットや客室乗務員ら3千人の削減を計画していると表明。英航空大手ブリティッシュ・エアウェイズも最大1万2千人の従業員の削減を検討している。
国際民間航空機関(ICAO)によると、新型コロナの流行の影響で、今年の乗客が最大15億4千万人減少し、全体で同2730億ドル(約29兆円)の減収になる恐れがあるという。米紙ウォールストリート・ジャーナルは「航空業界で進む規模縮小は今後、何年も続く」と予測する。
経営改善への出口が見えない中、各航空会社は救済措置を政府に求めている。ドイツ航空大手ルフトハンザは7日、90億ユーロ(約1兆500億円)の救済措置を独政府と協議していると発表した。同社は長距離線の輸送能力を大幅に削減し、資金繰りが行き詰まる可能性があるため、政府に資金援助を求めていた。イタリアのパトゥアネッリ産業相は4月下旬、救済措置として同国の航空大手アリタリアを完全国有化すると発表した。
ただ、各国の政府は支援を大手に集中させており、格安航空への救済措置には消極的との見方もある。
英ヴァージン・グループが出資する、オーストラリアの航空2位ヴァージン・オーストラリアは4月21日、事実上経営破綻した。同社は低価格を武器に路線を拡大していたが、新型コロナ感染拡大の影響で財務状況が悪化。オーストラリア政府に14億豪ドル(約970億円)の支援を求めていたが拒否されていた。
ライアンエアのオレアリーCEOは欧州メディアに、各国政府は全ての航空会社を平等に扱っていないとの見方を示した。