三越伊勢丹ホールディングス(HD)は11日、令和3年3月期の業績予想の公表を見送った。新型コロナウイルス感染拡大の防止などに伴う営業自粛で売り上げが減少する一方、営業再開の見通しが立たないため。同社は元年度から3カ年の中期経営計画を見直し、コロナ収束後の消費変容を見据えたデジタル戦略強化を打ち出す。(日野稚子)
「新型コロナで(生活や消費の)行動はかなり変わる。(売上高は)かなり低迷が続いた後に回復するL字型になるだろう」。杉江俊彦社長は同日の電話記者会見で、今後の見通しに厳しい見方を示した。
同日発表の2年3月期連結決算は新型コロナの影響による2月以降の客数減や営業自粛で売上高が落ち込み、店舗の減損損失などを計上。最終損益は111億円の赤字(前期は134億円の黒字)に転落した。
三越銀座店(東京)や伊勢丹新宿本店(同)など基幹店をはじめ、首都圏立地の6店が政府の緊急事態宣言の発令後から全館休業、地方店も営業は食品売り場のみ。同社の推計ではほぼ全店休業状態の5月は売上高が前年同月比92・8%減の大幅ダウンの見込みだ。
店舗営業を再開しても外出自粛が続き売上高は3~4割減となるほか、その後も長期的な消費低迷で1~2割減ると見積もる。営業再開に伴う来店客への検温や従業員控室の改装などで10億~15億円の追加コストもかかる。
百貨店業界は昨年10月の消費税増税などで売り上げを落とし、今年も新型コロナで訪日外国人客を含む来店客の減少に見舞われる。緊急事態制限発令後の4月に食料品売り場の営業を継続した企業も、食品売上高は前年同月比約5割程度と落ち込みが続く。
一方、4月はインターネット通販サイトの売り上げが伸びるなど行動変化の恩恵を受けており、年度前半の書き入れ時となる中元商戦にどう対処するかが問われている。
三越伊勢丹HDもコロナ収束後の消費行動の変化を見据え、中期計画の見直しでネット通販サイトの充実に取り組むほか、顧客と販売員が直接つながる仕組みを導入する。