【欧州を読む】新型コロナ追跡アプリの開発続々 課題はやはりプライバシー





各国で新型コロナウイルス追跡アプリの開発が進んでいる。写真はスイスで開発されたアプリの画面=4月30日(ロイター)

 スマートフォン用のアプリを活用して、新型コロナウイルスの拡大を抑える取り組みが欧州で広がりつつある。ただ、新型コロナの感染者が接触した人を追跡するアプリを実用化すれば、個人の接触履歴が把握される可能性があることから、使用に前向きではない国民も多い。普及を進めるためには、プライバシーを侵害されることへの懸念をいかに払拭できるかが鍵になりそうだ。(ロンドン 板東和正)

■加速する開発

 英国のハンコック保健相は4月12日、新型コロナの追跡アプリをまもなく実用化することを明らかにした。

 アプリは英国のNHS(国民保健サービス)が米アップルや米グーグルと共同で開発したもので、感染者と接触した場合に警告を受ける仕組みになっている。具体的には、新型コロナの検査で陽性と診断された人がアプリに情報を入力すると、過去に接触した全ての人のスマホに警告音が鳴るシステムだ。警戒を呼びかけられた人は検査を受けたり、自主隔離したりするなど必要な対応を迅速に取ることができる。

 英国は3月23日に開始した外出制限を緩和する「出口戦略」を模索している。英政府関係者は「アプリが国民の生活に浸透すれば、感染を拡大するリスクを最小限に抑えられる」とした上で「外出制限を緩和する上でアプリは不可欠になる」との見方を示す。

 感染拡大を防止するためのアプリはすでに欧州の一部の国では導入されている。欧米メディアによると、ポーランドでは、帰国後に自主隔離が必要になった人を対象にしたアプリが導入された。ポーランドでは、海外から帰国した人は原則14日間の自宅隔離が義務付けられる。アプリ利用者は自身の写真を定期的に投稿して所在を証明することが求められ、当局は使用者が自宅にいることを把握できる仕組みだ。

■プライバシーの壁

 こうしたアプリは感染拡大のリスクを減らすことが期待される一方、政府が個人の接触履歴などを知る可能性があることで、プライバシー侵害への懸念が広がっている。

 個人情報の保護が課題となる中、欧州委員会は4月16日、新型コロナの感染拡大を防止するアプリについて、政府などが利用者の位置情報を収集するべきではないと提言した。

 アプリの開発を進める欧州各国は、プライバシーに配慮した対応を検討している。英政府は、開発中のアプリについて、国民に利用を強制しない方針だ。さらに、アプリに蓄積された情報は全て匿名で管理され、時間がたてば自動的に消去されるという。

続きを読む



Source link