WTOのアゼベド事務局長が辞任表明 今年8月末に





WTOのアゼベド事務局長

 【ロンドン=板東和正】世界貿易機関(WTO)のアゼベド事務局長は14日、8月末で辞任すると表明した。来年8月末の任期満了を待たず、1年前倒しの退任が決まった。WTOは、米国が上級委員会の委員の選任を拒否したことから、紛争処理の機能停止に陥っている。混乱が続く中でのトップ辞任となり、通商問題における国際協調に影響を与える可能性もある。

 アゼベド氏はブラジル出身。2013年9月に就任し、現在2期目。

 アゼベド氏は14日に開催された各国代表団とのテレビ電話会議で、自身の辞任を発表。アゼベド氏は辞任の理由について、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で今年6月の開催が見送られた最高議決機関の閣僚会議が来年6月にも開催される見通しだとした上で、閣僚会議の準備と後任の事務局長の選任手続きが重なるのは好ましくないと判断したと説明した。アゼベド氏は、辞任は健康上の問題や特定の政治的な目的ではないとし、「個人的な決断だ」と強調した。

 WTOは加盟国・地域同士の貿易上の紛争を解決するための準司法的な制度を設けており、「自由貿易の番人」と呼ばれている。

 しかし、裁判の「最終審」に当たる上級委員会が米国の反対で任期が切れた委員の補充ができなくなり、昨年12月に機能が停止。紛争処理機能が1995年の設立以来初めてまひし、保護主義的な動きに拍車がかかるとの警戒感が広がっている。

 米国の姿勢の背景には、WTOへの不信感がある。米国は中国の知的財産権の侵害などにWTOが十分に対応できていないとして不満を募らせていたとみられている。

 アゼベド氏の辞任を受け、加盟国は後任選びを進める見通しだ。ロイター通信によると、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は後任を探すことは「困難だ」としながらも後任選定の手続きに参加すると明かした。欧州連合(EU)のホーガン欧州委員(通商担当)は後任の選定は年内に行う必要があると述べた。



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