ペルシャ湾を航行中の米海軍艦船に、イラン革命防衛隊の艦船が異常接近するなど、イランが米国への挑発を活発化させている。
米国は現在、新型コロナウイルスの最大の感染国となり、対策に追われている。そうした状況を受けて揺さぶりをかけたものとみられており、ウイルス禍を軍事行動の機会としたならもってのほかだ。
トランプ米大統領は、嫌がらせがあれば「撃沈し破壊するよう指示した」と表明し、革命防衛隊の幹部も「米軍を破壊する」と応じた。革命防衛隊はさらに、イラン初の軍事衛星を打ち上げた。米政府はこれは弾道ミサイルの発射実験であり、国連安全保障理事会の決議違反だと猛反発している。
今年1月、米軍がイラン革命防衛隊の精鋭部隊司令官を殺害し、イランが報復としてイラクの米軍駐留基地をミサイル攻撃した。
米・イラン危機は、一触即発の事態が続いているとの認識が必要だ。トランプ大統領は、米議会が可決した政権の対イラン戦争行為を制限するための決議案に拒否権を行使している。
イラン南部のオマーン湾では、イラン海軍艦船が訓練中、別のイラン艦船のミサイルが命中し、多数が死亡する事故も起きた。誤射とはいえ、危険極まりない。
にらみを利かせるはずの米軍は空母の乗組員に感染が広がるなど即応性の低下が懸念されている。そこをついた動きである。
米国と地域大国のイランが全面衝突に発展すれば、戦火は中東全体に広がる恐れがある。
中国は、ウイルス禍のさなかにも南シナ海などで力ずくの海洋進出を進めている。イランに、その中国との対米共闘の姿勢が目立つことも気がかりである。
4月末、中国の習近平国家主席はイランのロウハニ大統領と電話会談し、「一方的な制裁は防疫努力を阻害する」と述べ、米国の制裁がウイルス対策を妨げたとするイランの主張に同調した。
ポンペオ米国務長官は、新型ウイルス対策をめぐって中国とイラン、ロシアが連携し、「米国の評価を傷つけようと工作を展開している」と批判している。
日本は米国の同盟国として、ウイルス禍に付け込む覇権拡大や軍事挑発の動きに目を光らせるべきだ。同時にイランに対して冷静な行動を求めていく必要がある。