キリンビールの主力ブランド「キリン一番搾り」の人気が沸騰している。嗜好(しこう)の多様化や増税でビール類市場が停滞するなか、2019年の一番搾り缶の売り上げは過去8年のうち最高を記録した※1。一番搾りがなぜ”いま”選ばれているのか。一番搾りの好調を生み出す「おいしさ」の理由を探った。
※1 2012年~2019年の一番搾り缶出荷実績において(キリンビール調べ)
嗜好の変化をとらえるリニューアルで進化
「お客さま調査でビールに期待することの最上位が『おいしさ』。一番搾りは年々、そのイメージが上昇している」。布施孝之社長は3月初旬の投資家説明会で人気の要因をこう述べ、今後の売れ行きに自信を示した。
「コクのある」「キレがいい」「さわやかな苦み」「香り豊か」-長らく日本の食卓を彩ってきたビールは幅広い人々に愛される分、表現するフレーズは多岐にわたる。2000年代に発泡酒や新ジャンルが登場して以降はブランドが乱立し、さらに際立った特長をアピールする傾向がみられる。
競争が激化する市場に危機感を抱く布施社長は17年からマーケティングの変革に取り組み、投資を一番搾りなど7ブランドに集中。競合との差別化など企業目線の議論を排し、「お客さま基軸の判断」を徹底した。
その姿勢を反映したのが、17年、19年と矢継ぎ早に実施した一番搾りのリニューアルだ。キリンが事前にビールに期待することを調べたところ「おいしさ」が51.2%と最多となり、「味わい」(37.2%)、「うまみ」(31.6%)に大きく差をつけた※2。
※2 n数=728、複数回答(キリンビール調べ)
このためリニューアルは「おいしさ」を第一として、商品開発に取り組んだ。一番搾りは1990年の誕生以来、商品名の由来にもなっている麦から最初に出る麦汁のみで造る製法にこだわってきた。同社の一般的なビールは、麦汁をろ過する工程で自然に流れ出る“一番搾り麦汁”と、さらにお湯を足して取り出した二番搾り麦汁を混ぜるが、一番搾りは一番搾り麦汁だけを贅沢に使ってつくることで、麦の澄んだうまみが感じられながらも雑味がなく調和の取れた味わいに仕上がる。
リニューアルはこの製法の利点を最大限生かし、”飲みやすく、飲み飽きない”おいしさを進化させた。17年はろ過の温度を下げることで雑味を低減。19年は苦みや香りのもとになるホップの配合を変え、上品な味わいに磨きをかけた。
一番搾りのリニューアルが17、19年と短期間で行われたことも、変化し続ける嗜好の”いま”をとらえた要因といえそうだ。
CMも「お客さま基軸」で判断
リニューアルに併せ、テレビCMなど魅力を伝える活動も進化させている。俳優の堤真一さんや石田ゆり子さんらが軽快な音楽を背景に、ビールを一口飲んだ後に見せる幸せな表情は、「やっぱりビールはおいしい、うれしい。」というコピー通りだ。
製法や味など説明的な内容を入れず、シンプルにおいしさを訴求するCMにもお客さま基軸の判断が貫かれている。
こうした取り組みが功を奏し、2019年6、8、9月とCM好感度ランキング(業種別)でアルコール類1位を獲得した※3。調査するCM総合研究所は「出演者が餃子やうなぎなどの食事と合わせて一番搾りをおいしそうに味わうシーンが、『自分も飲んでみたい』といった視聴者の共感を呼んだのでは」と分析する。また、オリジナルのウエブ動画も配信し、ビール離れが叫ばれる20代を中心とした若年層にもファンを広げている。
※3 CM総合研究所調べ
商品とCMなどコミュニケーション活動の相乗効果で、19年の一番搾り缶商品出荷実績は前年比3.3%増の17万3679キロリットルに達し、12年から8年間のうち最高となった。ビール類市場が増税などで停滞するなか、一番搾りはお客様が求める“おいしさ”の進化で幅広い層の支持を集めている。
喉の渇きを潤したくなる機会の多いこの時期に、ビール好きな人も、久しぶりの人も、これからの人も、ビールを飲むなら今おいしさで大人気の一番搾りを試してみてはいかがだろうか。
提供:キリンビール