政府・与党が検察庁法改正案の今国会成立を見送ることを決めたのは、新型コロナウイルスの感染拡大に対処するための令和2年度第2次補正予算案の早期成立を確実にするためだ。とはいえ、逆風に耐えながら、安全保障関連法や特定秘密保護法など必要な重要法案を成立させてきた安倍晋三政権にとっては痛手であり、実行力を回復できるかが注目される。
「国民からさまざまな批判があった。批判にしっかりと応えていくことが大切だ」。安倍首相は18日夜、官邸で記者団に、検察庁法改正案の見送りについて、こう語った。改正案をめぐっては、自民党内の一部にも不満が広がっており、秋の臨時国会に向けて党の態勢を立て直す狙いもあったとみられる。
「反改正案」の声が当初、ツイッター上で盛り上がったことから、自民党内には「ネットで騒がれたから法案の成立を見送るのでは理屈が立たない」(幹部)との不満もくすぶる。
ただ、今国会の会期末が6月17日に迫る中、政府・与党は新型コロナ対策に専念するため、会期延長に踏み切りたくないのが本音だ。同時に、新型コロナの影響で生活苦に直面する国民を支えるための2次補正を会期内に成立させるには、野党の協力を得ることが欠かせない。そのため、野党の神経を逆なですることが確実な改正案の成立は見送らざるを得ないという政府・与党の苦しい事情もあった。
公明党幹部は、改正案の成立見送りについて、安倍首相の「柔軟性」を高く評価したが、森雅子法相ら担当閣僚の説明不足に起因する部分も軽視できず、政権が負ったダメージは決して小さくない。