ソフトバンクグループ(SBG)が18日に発表した令和2年3月期連結決算は、15年ぶりの最終赤字となり、新型コロナウイルスの影響が色濃く現れた。SBGは海外のIT企業などに投資し、成長させることで莫大(ばくだい)な見返りを生むビジネスモデルを描き、ここ数年は著しい成長を続けてきた。しかしコロナ禍が投資先の経営を直撃し、孫正義会長兼社長の積極姿勢があだとなった格好だ。
「1929年の世界恐慌と同様に世界に大きな影響を与える出来事で、われわれも色んな影響を受けた」。新型コロナについてそう語る孫氏に、いつもの強気の様子は見られなかった。営業利益が2兆円を超え、過去最高益となった1年前から経営環境は一変、業績は急降下した。
同社は平成29年5月に、運用額が10兆円に上るソフトバンク・ビジョン・ファンドを設立すると、わずか2年で大半の投資枠を使い切った。さらに昨年7月には11兆円を超える2号ファンドの立ち上げを表明するなど、異例のスピードで巨額投資を続けてきた。
投資対象は革新的な技術を持ち、今後成長が見込めるITベンチャー。成長を後押しすることで自社グループの成長にもつなげようというねらいがある。ただ、巨額投資に伴う負債も桁違いで、市場からはリスクを指摘する声も絶えなかった。
不安は昨年9月、共有オフィス「ウィーワーク」を運営する米ウィーカンパニーが上場計画を撤回したことで顕在化した。投資家から企業統治や事業の収益性に疑念を持たれたことが要因で、ウィーの企業価値が急落した。
再建に向けSBGがウィーに1兆円の追加投資を決める中、追い打ちをかけたのが新型コロナだった。世界的な行動自粛が投資先企業の経営にも打撃を与え、SBGの株価も大幅に下落。3月27日には有力投資先の英衛星通信会社「ワンウェブ」が経営破綻した。
コロナの直撃を受けた2年1~3月期の最終損益は1兆4381億円の赤字。東京電力(現東京電力ホールディングス)が東日本大震災発生時の平成23年1~3月期に計上した赤字額1兆3872億円を上回った。
ただ、孫氏は会社の現状については4・5兆円の保有株式を売却し財務状況が改善される点を強調。ITバブル崩壊の際は崖から落ちるのを「指2本で支えていた」といい、今は「余裕で崖の下をのぞいている状況だ」と不安払拭を図った。