財務省が21日発表した貿易統計(速報、通関ベース)によると、新型コロナウイルスの世界的な大流行の影響で、4月の輸出は前年同月比21・9%減の5兆2023億円だった。下げ幅はリーマン・ショックで世界経済が落ち込んだ平成21年10月(23・2%減)以来、10年6カ月ぶりの大きさ。ただ、中国で生産や物流が回復してきたことを受け、中国向け輸出の下げ幅は前月に比べ半減した。
世界全体からの輸入は、7・2%減の6兆1327億円。品不足が深刻だったマスクを含む織物用糸・繊維用品などが伸びたが、原油価格の低迷でエネルギー関連は減少した。欧州連合(EU)からのバッグ類や衣類が大きく落ち込んだのも特徴で、不要不急の消費を控える動きが反映されたとみられる。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は9304億円の赤字だった。
中国向けの輸出は4・1%減の1兆1822億円。4カ月連続の減少だが、下げ幅は前月(8・7%減)と比べ半減した。生産活動の再開などを受けて半導体電子部品は増えた。
米国向けの輸出は37・8%減の8798億円で、東日本大震災直後の23年4月以来の下げ幅だった。自動車や航空機エンジンなどの原動機、自動車部品が落ち込んだ。欧州連合(EU)向けの輸出も28・0%減の4835億円だった。
農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「中国との貿易は再開されたが、欧米などとの貿易は大きく収縮している。輸出入の低迷は長引く」と指摘した。