【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領は21日、記者団に対し、中国が22日に開幕した全国人民代表大会(全人代)で国家の分裂行為などを禁じる国家安全法を香港に導入する議案を審議することに関し、仮に導入された場合は「強力に対処する」と述べ、中国を強く牽制(けんせい)した。
トランプ氏は法案の全容を把握していないとした上で「適切な時期に声明を出す」とも語った。
国務省のオルタガス報道官は21日、「香港住民の意思に反して国家安全法を導入することは情勢を著しく不安定化させ、米国および国際社会の強い非難を浴びることになるだろう」と警告する声明を発表した。
トランプ氏は昨年11月、中国の習近平体制に香港での民主化運動の弾圧を自制するよう圧力をかけることを狙った「香港人権民主法」を成立させた。
同法は「一国二制度」を前提として香港に認められている関税や査証(ビザ)に関する優遇措置に関し、中国が制度を守っているかどうかを国務省が検証し、措置存続の是非を毎年見直すもので、トランプ氏らの発言は、事態によっては同法の発動を辞さない構えを示したものとみられる。
一方、共和党のトゥーミー、民主党のバンホーレン両上院議員は21日、香港への国家安全法の導入を図る中国共産党幹部らに制裁を科す内容を盛り込んだ、香港の自治権に向けた超党派の制裁法案を上院に提出した。法案は、これらの幹部らと取引した金融機関や企業に対しても2次制裁を科すとしている。