【北京=西見由章】新型コロナウイルス感染拡大が各国の財政に大きな影響を与える中で、中国の2020年国防予算は前年実績比6・6%増と高水準を維持した。中国の習近平指導部は南シナ海や台湾問題をめぐって米軍との対立が今後激化するとみている。外交や公共サービスの支出を大幅に削減する一方、国防費の伸びは維持し、軍拡を優先する姿勢を示した形だ。
20年の国防予算は1兆2680億500万元(約19兆1千億円)で、米国に次ぐ世界第2位の規模。日本の令和2年度当初予算の防衛費5兆3133億円の約3・6倍にあたる。全国人民代表大会(全人代)の張業遂(ちょう・ぎょうすい)報道官は21日夜に開いた記者会見で「中国の防衛費の国内総生産(GDP)に占める割合は長年1・3%前後を保ち、世界の平均水準である2・6%を大きく下回っている」と主張した。
ただ中国は今年1~3月期のGDP実質成長率が前年同期比マイナス6・8%を記録。通年でも「現実的には3%台にとどまる」(北京の経済ジャーナリスト)とされる中、軍事費の突出が際立つ。
日本の中国軍事研究者は、各国の経済や国民生活が新型コロナでダメージを受ける中で「民主主義国はこれから軍事費が抑制される流れになる一方、(国民の批判を受けない)権威主義国家は軍備増強をとめることはない」と指摘する。また、中国の国防予算の実態は公表額の2倍以上との見方もあり、国際社会や自国民のみえないところで不透明な軍拡を図っている可能性もある。
「中国は短期間のうちに、核弾頭の数を1千発の水準まで増やす必要がある」
共産党機関紙、人民日報系の環球時報編集長、胡錫進氏が今月、中国のSNSに投稿した内容は国内外で議論を呼んだ。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると中国は19年1月時点で290発の核弾頭を保有していると推定され、3倍近く増やせという主張だ。北京の外交筋は「中国当局のアドバルーンである可能性があり、危険な兆候だ」と警戒する。