土佐防災日記~東北から移住して(1)「故郷被災の悔しさをバネに」四万十町防災職員、中野未歩





東日本大震災の経験を南海トラフ地震に生かすため宮城から高知へ移住した中野未歩さん

 来年、平成23年に起きた東日本大震災から10年を迎える。被災地は復興途上だが、当時中高生だった若者たちは社会人として活躍し始めている。そんな若者のひとりである高知県四万十町役場の防災担当職員、中野未歩さん(27)は故郷の宮城県から移住し、次の大震災と懸念されている南海トラフ地震への備えに尽力する異色の存在だ。連載「土佐防災日記」で「教訓を生かしたい」との思いをつづる。

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 私は3年前の平成29年に高知県四万十町へ移住し、現在町役場で危機管理課職員として勤務している。今回は、宮城県石巻市生まれの私が縁もゆかりもなかった四万十町で生活することを決めた経緯について、紹介したいと思う。

 私は新しい世界や環境へ飛び込むことに躊(ちゅう)躇(ちょ)がない性格で、中高時代は実家を飛び出し、仙台市で寮生活。高校では1年間休学しカナダへ留学、大学ではアフリカで半年間国連の業務に携わるインターンシップに参加した。

 カナダ留学から帰国した半年後、仙台市にいた私は23年3月11日、東日本大震災に遭遇した。当時の体験は次回以降触れるが、あの強烈な被災体験がその後の私の運命を決めた。人の役に立つ専門的な深い学びがしたいという気持ちが芽生えた。自然災害にはあらがえないが、被害を減らす方法はあるはずだと考えた。

 大学卒業後、防災分野の研究室に入った。この研究室では現場と協働し実践しながら研究を進めており、私はフィールドワークの現場である高知県へ足を運んだ。5年前初めて高知に降り立った日は雨が降っており、とても寒く、南国のイメージとは異なった印象だったことを覚えている。

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