殺人を犯したのに許されてしまった少年はその罪をどう受け止め生きていくのか。大人は罪を許された少年とどう向き合うのか-。鬱屈した衝動を秘める思春期の少年少女を描かせたら唯一無二との評判が高い内藤瑛亮監督(37)が、新作映画「許された子どもたち」でそんな問いかけを突き付ける。実際に起きた複数の少年事件に着想を得て制作。商業映画ではなく、自主制作でも完成させたかったという内藤監督に作品への思いを聞いた。(水沼啓子)
本編の発想の基は、監督が小学生のときに起きた「山形マット死事件」(平成5年)だ。「あの事件の加害少年たちは最初自供していたのに途中から否認に転じ、家庭裁判所も無罪に相当する不処分の判決を下した。罪に問われないことがショックで、ずっと引っかかっていた」と話す。
この事件を題材に作品を作ろうと、8年ほど前に映画会社に企画を持ち込むも「『もっとエンターテインメント性を出してほしい』『アイドルをメインキャストに使ってほしい』と言われ、僕が描きたい形ではないので悩んでいた」と語る。
そんな中、川崎中1殺害事件(27年)が起きた。「あの事件を見て、少年事件やいじめに対する自分の問題意識とつながるところがあった。現代的な問題を顕在化した事件でもあったので、その要素も取り入れつつ、いま撮りたい、いま伝えたいという思いが高まり、自主制作でも構わないという思いに至った」と振り返る。