新型コロナ 感染を抑制したフィンランド 徹底した危機管理が奏功





15日、フィンランド・エスポーで、ドライブスルー方式で検査をする医療従事者(AP)

 【ロンドン=板東和正】新型コロナウイルスが欧州で蔓延(まんえん)する中、北欧フィンランドが感染拡大の抑制に成功している。第二次世界大戦で隣国の旧ソ連に侵攻された教訓から、マスクや防護服などの医療物資を平時から備蓄する危機管理体制が功を奏したとみられている。

■大戦を「教訓」に

 米ジョンズ・ホプキンズ大の集計によると、27日時点で、フィンランドの感染者数は累計約6600人と北欧4カ国の中で最も少ない。フィンランドと国境を接するロシア(約35万3千人)の50分の1未満にあたる。

 フィンランドは3月16日に新型コロナの感染拡大を受け、緊急事態を宣言。その後、レストラン、カフェ、バーなどの閉鎖に踏み切った。ただ、フィンランド政府は屋外の自由な運動を許可し、運動を1日1回に限定した英国に比べて外出制限は緩やかだった。国民に厳格な外出制限を強いない代わりに、物資の充実に力を入れた。

 フィンランド政府は、戦争や災害、感染症などの国家の非常事態に対応できるように、約550万人の国民に物資をいつでも配布できる欧州最大の危機管理体制を構築しているとされる。米紙ニューヨーク・タイムズによると、フィンランド政府は医療物資だけではなく、油や穀物といった食料、弾薬の材料などを備蓄。非常事態に備えて備蓄する対策は終戦後の1950年代に導入された。

 フィンランドには、大戦が勃発した39年に旧ソ連の侵略を受け、独立を保った歴史がある。戦後もロシアへの警戒を続け、自国防衛のため備えを万全にしてきた。ノルウェーで防衛問題を研究する学者、マグヌス・ハケンスタッド氏はニューヨーク・タイムズに「フィンランドは常に災害や第三次世界大戦への準備ができている」と指摘した。新型コロナを受けて、備蓄倉庫は戦後初めて活用され、病院などに医療物資が届けられたとみられている。

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