「早く遺族の元に」京アニ事件 警察歯科医の壮絶な思い





「犠牲者を家族の元に返したいと必死だった」と振り返る岡本肇さん

 36人が死亡、33人が負傷した京都アニメーションの放火殺人事件で、京都府警が殺人などの疑いで青葉真司容疑者(42)を逮捕したことを受けて、「警察歯科医」として遺体の身元特定に尽力した京都府歯科医師会専務理事の岡本肇さん(65)が産経新聞の取材に応じた。「過酷な現場だったが、犠牲者を遺族のもとに返したいと必死だった」と当時の壮絶な体験を振り返り、青葉容疑者に「きちんと説明してほしい」と求めた。

 事件があった昨年7月18日午後5時ごろ、京都市内の歯科医院で診療中だった岡本さんは、京都府警から「身元不明の遺体が多く出ている」と派遣要請を受けた。事件があったことはネットのニュースで知っていたが、亡くなった人がいることはまだ知らなかった。

 要請されたときには犠牲者は約10人と聞いていたが、遺体が安置されている同市伏見区の府警察学校に到着すると、警察官から「30人を超える」と知らされた。態勢を強化し、身元確認の作業が始まったのは午後6時過ぎ。集まった9人の歯科医が3人一組で遺体と向き合い、口内の観察や記録を行った。警察学校の体育館はとても蒸し暑く、防護衣やマスクを着用すると汗だくになったことを覚えているという。

 「強い意志と希望を持ってアニメ制作に取り組んできた人たちが、朝には元気に出社したのに、今は私の目の前にいる。犯人への怒りや悲しみでいっぱいだった」

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