東京メトロ日比谷線に6日、新たに虎ノ門ヒルズ駅が開業する。銀座線の虎ノ門駅と地下通路でつながり、コロナ禍のなか、森ビルなどが建設する大型複合ビル群を中心とした新しい街に、活気がもたらされることになりそうだ。(橘川玲奈)
虎ノ門地区は、北は霞が関の官公庁街、東は新橋、南は東京タワーや増上寺がある芝地区、西は六本木に囲まれる。平成26年6月に52階建ての「虎ノ門ヒルズ森タワー」がオープンしたのを皮切りに再開発が進んでおり、今年1月に「虎ノ門ヒルズビジネスタワー」が完成。さらに2つのビルの建築も進んでおり、森ビルによると、すべて完成すれば約3万人規模のビジネス街となる。
高層ビル群の地下に位置する虎ノ門ヒルズ駅は、日比谷線の神谷町駅と霞ケ関駅の間に設置され、昭和39年の日比谷線全線開通以来、初めての新設される駅となる。
日比谷線茅場町駅から虎ノ門に通勤する会社員の女性(23)は、これまで銀座駅で銀座線に乗り換えていたが、虎ノ門ヒルズ駅の開業で乗り換えなしで行けるようになる。勤務先もヒルズ駅の方が近いため、通勤時間は10分ほど短縮されるという。六本木駅にも日比谷線で2駅となり、「会社帰りに行くのも便利になる」と期待する。
アクセスが向上するのは地下鉄だけではない。虎ノ門ヒルズビジネスタワーには、都臨海部と都心部を結ぶ新たなバス路線「東京BRT」の他、空港を結ぶシャトルバスのターミナルができる予定で、東京五輪・パラリンピックを見据え、交通の新たな要衝となる。
ビジネスタワーは4月に開業予定だったが、新型コロナの影響で延期。地下1階のレストラン街にカレー屋をオープン予定の森雅法店長(44)は「この場所は銀座線と日比谷線の中間地点。オープンが遅れていて心配はあるが、確実に人の流れができる」とにぎわいに自信をのぞかせた。
新駅の開業で街は盛り上がる一方、寂しさを口にする人もいる。虎ノ門の地で大正7年から営業を続ける「松屋珈琲店」の3代目、畔柳(くろやなぎ)一夫オーナー(47)だ。「再開発が進む前の虎ノ門は小さなビルが並び、そのオーナーがおもしろい話をしてくれた。商売としてはもうかるけど、今はコーヒーを買ってすぐ帰る人ばかり。街の良さが失われている気がする」と変わりゆく街に複雑な表情を浮かべた。