【小菅優の音楽と、夢に向かって】3カ月ぶりの本番にワクワク


 3月中旬に公演のない日々が始まってから、約3カ月がたちました。さすがにこんなに長く公演をしないのは初めてで、正直落ち着かなくなってきました。よくドラマなどであるみたいに、誰もいない砂浜で海に向かって大声で叫びたい気持ちです。

 最近、私の育ったドイツをはじめ、いろいろな同業者と電話する機会がありました。皆、同じような状況にいて、もがいています。暗い気持ちになってしまった人、今はプライベートライフを大事にする人、この状況で何ができるか考えてすべて実行に移す人、いろいろです。

 緊急事態宣言が解除されたばかり。まだまだお客さまを前にして演奏するのは難しいようですが、今月は無観客の有料ライブ配信ができることになりました。3カ月ぶりの本番、うれしくてしようがないです。

 チケットを購入して、ネット上で公演を見るなんて、少し前までは考えられなかったと思います。こうした形で音楽を続けられるのは幸せです。

 私自身、聴衆としてコンサートに足を運べないのはとても寂しく、ベルリン・フィルのライブ配信を見ることによって心が救われました。音楽監督のキリル・ペトレンコ氏によるこの事態を考慮した追悼の念、希望などが感じられる素晴らしいプログラムで、感動しました。

 今、世界中で、個人のライブ配信が行われたり、自宅での演奏の映像などがネット上で広まっています。演奏家がとにかく弾きたいのも分かるし、好意的に行われているものが多いですが、この状況がしばらく続くことを考えると、クオリティーの高さに重心をおいた、有料で仕事として認められるようなプラットホームが今後もっと出てくることを望みます。

 この危機を乗り越えたときに、たくさんの気づきと勉強によって、仲間たちと協力し、より良い音楽界を築きあげられることを心から祈っています。

 (こすげ・ゆう=ピアニスト)



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