ふるさと納税制度をめぐり、多額の寄付収入を得たことを理由に特別交付税を減らしたのは違法として、大阪府泉佐野市は8日、国に減額の取り消しを求める訴訟を大阪地裁に起こした。地方交付税をめぐる国と地方の訴訟は全国初とみられる。同市は、制度からの除外の是非をめぐっても国と係争中。
訴状などによると、総務省は昨年12月と今年3月、自治体の財源不足を補う特別交付税について、泉佐野市はふるさと納税で多額の収入があり、財政に余裕があるとして減額を決めた。その結果、令和元年度の交付額は計約5300万円に減らされ、前年度(計約5億円)の約1割となった。市は、ふるさと納税の寄付収入を特別交付税の算定に含めることは地方交付税法で想定されておらず、国の裁量の範囲を逸脱し違法だと主張している。
ふるさと納税制度で同市は、地場産品以外の返礼品に加えてアマゾンのギフト券を贈る手法で寄付を募り、平成30年度には全国の寄付総額の約1割にあたる約497億円を集めた。総務省は昨年6月、返礼品は寄付額の3割以下などとする、ふるさと納税の新制度を開始。泉佐野市など4市町の参加は認めていない。
この日、泉佐野市の千代松大耕(ひろやす)市長はコメントを出し、総務省の決定を「国の技術的指導に従わないことに対してのみせしめだ」と批判。特別交付税は新型コロナウイルス対応にあたる「りんくう総合医療センター」(同市)の運営費にあてる予定だったとし、「地域医療の崩壊を招きかねない」と訴えた。
総務省は「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。
一方、ふるさと納税制度からの除外の取り消しを市が求めた訴訟は、大阪高裁が今年1月に市の訴えを棄却。ただ、最高裁は今月2日に双方の意見を聞く弁論を開いた。30日に言い渡される判決で高裁の判断が見直されるか注目される。