社会に出てから「まさか…」高学歴女性を苦しめた「大人のADHD」の実態

学生時代は成績優秀で順風満帆だったにも関わらず、社会に出てから仕事でつまずき、「集中できない」「ミスが多い」「指示を忘れる」といった困難に直面する人がいます。エリートコースから外れてしまう彼らの背景には、発達障害、特に「大人のADHD(注意欠陥・多動性障害)」が隠れていることも少なくありません。

## 学生時代の優秀さから一転、社会での「困りごと」

一流私立大学を卒業したSJさん(女性、初診時20代)は、建築会社で事務職として働き始めてから、様々な「困りごと」を抱えるようになりました。学生時代は問題なく過ごせていたのに、仕事となると作業に集中することが難しく、頻繁にミスを繰り返し、上司からの指示を忘れてしまうことが多発しました。周囲の些細な音にも気が散りやすく、会話に集中できないこともありました。

## 仕事中に襲う「頭が真っ白」、マルチタスクの困難

仕事中は常に何かを考えているかと思えば、突然思考が停止し、文字通り「頭が真っ白」になってしまう時がありました。同時に複数の業務をこなすことが苦手で、上司と複数のテーマについて話していると、頭の中で情報が混乱し、話が入り混じってしまうこともあったと言います。これらの困難は、業務遂行に大きな支障をきたしました。

仕事中に困難を抱える大人のADHDのイメージ図:書類やタスクに囲まれ、集中できない様子仕事中に困難を抱える大人のADHDのイメージ図:書類やタスクに囲まれ、集中できない様子

## 日常生活にも影響、繰り返される失敗

仕事だけでなく、学生時代のアルバイトでも同様の傾向が見られました。スーパーでのレジ業務では、簡単な作業手順を間違えたり、扱っていた商品の場所や値段を忘れてしまったりすることがよくありました。運転免許は取得していましたが、運転自体が苦手で、ヒヤリとする場面や事故寸前になることも複数回経験していました。これらの経験は、彼女の自信を徐々に失わせていきました。

## 過去の診断と専門医への道のり

SJさんは自身の困難を解決しようと、これまでに2か所のメンタルクリニックを受診しました。最初のクリニックでは「神経衰弱」、次では「身体表現性障害」と診断され、抗不安薬や抗うつ薬が処方されましたが、いずれも症状の改善は見られませんでした。現在通院している医師からは、初めて「ADHDの可能性がある」と指摘されましたが、その医師自身では確定的な診断が難しいため、より専門的な外来への受診を勧められ、今回の専門外来に至ったのでした。このケースは、精神科医の岩波明氏の著書『高学歴発達障害エリートたちの転落と再生』(文春新書)でも取り上げられており、適切な診断と対処の重要性を示しています。

大人のADHDは、適切な診断と治療によって困難を軽減し、社会生活を立て直すことが可能です。SJさんのように、これまで気づかれずに苦しんできた人が専門家のサポートを得ることで、再生への道を歩み始めるケースは少なくありません。社会での生きづらさを感じている場合、専門機関に相談することが解決への第一歩となります。

[Source link ](https://news.yahoo.co.jp/articles/a80a8ff701a318c6f81aa87942375abdb7bd6046)