梅雨到来、避難所のコロナ対策待ったなし 宿泊施設確保に限界も





武田良太国家公安委員長(春名中撮影)

 多くの地域で梅雨に入り大雨による災害リスクが高まる中、「3つの密」が重なりやすい避難所での新型コロナウイルス感染症対策が懸念されている。病院隔離が必要な感染症の患者は従来想定外で、政府はホテルなどを避難所として利用できるよう急ピッチで準備を進める。ただ、対応の限界も指摘され、「不要不急」の避難をいかに減らせるかが対策のカギとなる。

 武田良太防災担当相は12日の記者会見で「可能な限り多くの避難所を確保する観点から、各企業が所有する研修所や宿泊施設の貸し出しにご協力いただけるよう依頼した」と述べ、経済団体への要請に乗り出したことを明らかにした。

 指定避難所である小中学校などは「密集、密閉、密接」の3つの密が重なりやすく、従来のガイドラインでも感染症患者用の部屋の確保や換気を求めてきた。だが、新型コロナの患者は入院措置が原則で、こうした状況での避難所開設は想定外だった。内閣府は4月、宿泊業界と連携しホテルや旅館などを高齢者ら感染リスクの高い人や発症の疑いがある人の避難所として活用する対策を示した。

 しかし、5月27日時点で確保した宿泊施設は全国約300カ所にとどまる。政府は1千カ所以上を目指すが、「全国的にムラもあり、もっと進めないといけない」(内閣府)。一概に比較できないが、指定避難所は東京都内だけで約2500カ所、昨年秋の台風災害では全国に最大約8千カ所も開設された。

 政府は混乱を避けるため新たにガイドラインを策定し、自治体に避難所訓練を促す。担当者は「一棟借り上げかどうかなど状況は異なり、臨機応変にやってもらうしかない」と話す。

 従来の指定避難所の環境改善も図る。マスクなどの衛生用品や、避難スペースを区切るパーテーション(仕切り)などの備蓄購入に、経済対策として計上された地方創生臨時交付金を充てられるようにした。各自治体では災害時、メーカーから物資の優先供給を受ける協定の締結も進む。

 ただ、行政の避難所にはおのずと限界があり、政府は自治体を通じ備蓄を増やしての自宅避難や、発生前から親戚や友人宅など避難所以外の避難先を確保するよう呼びかけている。避難計画に詳しい東大大学院の片田敏孝特任教授(災害社会工学)は「行政には限界がある。自立した避難のあり方を模索することで国民の防災力を向上させる機会にすべきだ」と話している。(市岡豊大)



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