中国、工業生産２カ月連続プラス　回復力に陰りも

　【北京＝三塚聖平】中国国家統計局が１５日発表した５月の主要経済統計によると、工業生産は前年同月比４・４％増だった。２カ月連続で前年実績を上回ったものの、３、４月と比べて回復の勢いに陰りもみられる。世界での新型コロナウイルス流行の影響を受け、輸出受注の低迷が響いたとみられる。消費や投資の回復も遅れており、中国政府は景気下支えの姿勢を鮮明にしている。

　工業生産は４月に３・９％増で、４カ月ぶりに前年実績を上回っていた。５月はさらに生産回復が進み、自動車やパソコンなどが２０％前後の増加を見せて全体を牽（けん）引（いん）した。一方で、前月から伸び率を縮小させた製品も目立ち、統計局は「一部の業種や製品は回復力が若干弱まっている」と分析している。

　一方、消費動向を示す小売売上高は２・８％減と、４月（７・５％減）からは持ち直したがマイナスが続いている。飲食収入が１８・９％減と、４月（３１・１％減）からは回復したものの、依然として大幅な落ち込みが続いている。５月下旬に開かれた全国人民代表大会（全人代）では、消費喚起に重点を置いた政策が表明されており、政府主導の消費回復がどこまで進むか注視される。

　また、企業の設備投資を含む固定資産投資は、１～５月の累計で前年同期比６・３％減。１～４月（１０・３％減）からは回復したもののマイナスが続いている。道路や鉄道などのインフラ投資は６・３％減だった。

　生産、消費、設備投資の主要経済統計は、新型コロナ直撃を受けて１～２月に軒並み初のマイナスに落ち込んでいた。中国政府は一時、景気の「Ｖ字回復」を目指していたが、世界経済の悪化を受けて回復に勢いが出ていない。