新型コロナウイルスの影響で雇用情勢が悪化する中、政府が人材に余剰感のある企業と不足している企業をマッチング(適合)させ、失業者の増加を抑制する仕組みづくりに乗り出すことが15日、分かった。企業の人材に関する情報をデータベース化する地方自治体の動きを後押しするとともに、これらをネットワーク化し、全国で共有することも検討する。企業間だけでなく、農林水産業など多様な産業間でのマッチングも進める。16日に初会合を開く副大臣会合で検討を本格化させる。
埼玉県は先月、大野元裕知事の主導で経済基盤の強化に向けた「戦略会議」を設置。今後、数万社へのアンケートを通して収集する人材の余剰・不足に関する情報をデータベース化し、開設予定の「雇用対策ポータル(玄関)サイト」で一部を公開する方向だ。企業関係者がサイトを閲覧したり、自社の情報を登録したりすることがマッチングの契機となる。ハローワークなどとも連携する。
経済産業省は、埼玉県での取り組みを一つの“モデル”とし、全国の経産局を通して他の都道府県でも実施を促す方針。「データベースの全国規模での共有も検討する」(関係者)という。16日の会合では牧原秀樹経産副大臣が農林水産、総務、国土交通など各省の副大臣に、それぞれが所管する業界を含めたマッチングの仕組みづくりを呼びかける。新型コロナ収束後を見据え、一時的な雇用の受け入れも活発化させる。
経済再開に向けた動きが強まる中でも、需要が回復していない業種ではかえって人材の余剰感が意識され、非正規社員の解雇や雇い止めが急増する懸念が強い。観光関連が依然として厳しい一方、来店客が増えたスーパーや第5世代(5G)移動通信システムの環境整備が進むIT業界は人手不足だ。業種・産業ごとの差が鮮明になる中、雇用のマッチングの重要性が増している。