政府は19日から、新型コロナウイルス禍の中で自粛を求めてきた都道府県境をまたぐ移動を、全国で解禁すると決めた。接待を伴う飲食店に対する休業要請も同日から解除した。
都道府県もおおむね国の方針に沿って、移動の自粛や休業の要請を解除した。
感染症対策のためやむを得なかった措置だが、自粛や休業により国民の行動は大きく制限されてきた。その解除で自由が広がることは歓迎できる。
人々の暮らしは、住んでいる都道府県に収まるものではない。たとえば、旅行は人にとって大切な営みである。
ただし、ウイルスが消え去ったわけではない。旅行や飲食などの社会経済活動は、しっかりした感染防止策の実行を伴うものでなくてはならない。気を緩めては私たち自身の命や健康を守ることは難しい。
安倍晋三首相は18日の記者会見で、「ガイドラインを参考に、感染予防策を講じながら、社会経済活動を本格化していただきたい」と述べた。
米国など海外では、経済活動を再開した後、感染が拡大した例がある。
5月25日の緊急事態宣言の全面解除後も、日本国内で感染は続いている。18日に判明した東京の新規感染者数は41人だった。自粛や休業要請を解除したといっても、東京の数字は決して小さいとは言えない。新宿区が実施している「夜の繁華街」への集団検査に伴う感染判明が目立っている。
感染防止のガイドラインの実行は極めて大切である。事業者や店側は換気に努めたり、客同士の距離をとったりする必要がある。接待を伴う飲食店やライブハウスなどでは客の名簿管理も必須だ。客の側も協力してほしい。
政府は新しい対策も導入した。感染者と濃厚接触した可能性を知らせるスマートフォン向けアプリを19日から配信する。
アプリをダウンロードしたスマホを持つ人同士が1メートル以内に近づき、それが15分以上続けば接触データとして残す。感染者が見つかれば相手に通知する。プライバシーに配慮し、位置情報や電話番号など個人を特定する情報は記録しない。このアプリを活用することで早期の検査実施につなげ、感染拡大を防ぎたい。