リニア中央新幹線の静岡工区が大井川の水問題をめぐって着工できていない問題で、JR東海の金子慎社長と静岡県の川勝平太知事が26日、静岡県庁で1対1で会談した。2氏のトップ会談は初めてだが、互いに自らの主張を訴えて議論は平行線をたどり、今日の議論を終えた。今月中の準備工事の再開は厳しい状況となり、予定通りの開業は見通せなくなった。
金子氏は終了後に報道陣の取材に応じ、「ヤードの整備をしてよいかとのお願いは受け止めていただいた」としたうえで、「(令和9年の)開業が困難かどうかについて社内に持ち帰って検討する」と述べるにとどめた。
リニア建設をめぐっては、南アルプスを貫くトンネルの掘削工事に伴い、大井川の流量が減少することを懸念する静岡県が建設に反対し、静岡工区が未着手となっている。同工区は、東京・名古屋間の約286キロのうち、地下トンネルの約8・9キロのみ。国土交通省が仲介役となって有識者会議が設置され、現在も環境対策について議論している。
JR東海は静岡工区の資材置き場や換気設備、濁水処理設備の設置といった準備工事を今月中に再開できなければ、予定する東京・品川-名古屋間の令和9年の開業は困難だとしている。
トップ会談に先立って16日に行われた会議で川勝氏と大井川流域10市町の首長は、準備工事再開について「国の有識者会議で検討中であり、その結果を待つべきだ」との見解でまとまっている。川勝氏はこの日金子氏に、流域市町を代表する立場として大井川の水量減への不安を改めて訴えた。一方の金子氏は再開を打診している準備工事の内容や範囲を改めて川勝氏に説明し、「本体工事につながるものではない」として同意するよう促した。